チタンの特長
チタンとは・・・環境に優しい金属
チタンは軽く、強く、耐食性に優れた金属です。
重さは銅やニッケルの約2分の1、銅の約6割、強さはステンレス鋼を上回り、アルミニウムの約3倍の強度を持っています。
又、耐食性では、多くの場合ステンレス鋼と比較しても極めて優れており、特に海水に対しては白金に匹敵します。
さらに、無害性、生体適合性は、他金属に比類が無く、人体に優しい金属といえます。
こうした特性を生かした応用分野は無限です。
チタンは経年劣化がほとんどないため、100%のリサイクルが可能です。
環境を大切に考える未来派金属といえます。
The nature of the titanium
チタンの性質
チタンの機械的性質
- 比強度が高い
- チタンの比重は鋼・ステンレス鋼の約60%で、構造材料として使用する場合、これら金属材料の半分の重量ですむことになります。
このため非強度は(引張強さ/比重)が高く、特にチタン合金の非強度は500℃まで実用金属中最高の値を示します。 - 耐力/引張強さの比率が高い
- チタンは引張強度に対して耐力値が高く、特にチタン合金ではその比率が90%以上という高い値を示します。
- 疲労強度がすぐれている
- 引張強さに対して疲労強度が極めて高く、疲労比(疲労強度/引張強さ)は0.5~0.6を示します。
(鋼の疲労比は0.2~0.3) - 衝撃性質がすぐれている
- 工業用チタンは常温よりむしろ低温で靭性を有しております。
また、チタン合金も鋼であらわれるような低温における急激な脆化現象を示しません。
機械的性質表
組成 (wt.%,合金名) |
熱処理 | 常温における引張性質 | 特長 | 絞り (%) |
ビッカース 硬さ |
比強度 (N/㎜2) |
||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
引張強さ (N/㎜2) |
0.2耐力 (N/㎜2) |
伸び (%) |
||||||
純チタン | ||||||||
JIS1種 | 焼鈍 | 270~410 | 165以上 | 27以上 | 成形性 | 40以上 | 130 | 60以上 |
JIS2種 | 焼鈍 | 340~510 | 215以上 | 23以上 | 汎用性の高い 代表的品種 |
40以上 | 160 | 75 |
JIS3種 | 焼鈍 | 480~620 | 345以上 | 18以上 | 中強度 | 30以上 | 200 | 105 |
JIS4種 | 焼鈍 | 550~750 | 485以上 | 15以上 | 高強度 | 25以上 | 230 | 120. |
耐食合金 | ||||||||
0.15Pd (JIS11種) |
焼鈍 | 270~410 | 165以上 | 27以上 | 隙間腐食性 | 40 | 130 | 60 |
0.15Pd (JIS12種) |
焼鈍 | 340~510 | 215以上 | 23以上 | 隙間腐食性 | 40 | 160 | 75 |
0.15Pd (JIS13種) |
焼鈍 | 480~620 | 345以上 | 18以上 | 隙間腐食性 | 30 | 200 | 105 |
α合金 | ||||||||
5A1-2.5Sn | 焼鈍 | 795以上 | 760以上 | 10以上 | 溶接性 耐熱性 |
25 | 310 | 180 |
α+β合金 | ||||||||
3A1-2.5V | 焼鈍 (SR) |
620以上 (860以上) |
485以上 (725以上) |
15以上 (10以上) |
冷間加工性 | 30 | - | 140 |
4.5Al-3V-2Mo-2Fe | 焼鈍 (STA) |
925以上 (1140以上) |
870以上 (1070以上) |
10以上 (10以上) |
高加工性 低温超塑性 高疲労強度 |
- | - | - |
6Al-4V (JIS60種) |
焼鈍 (STA) |
890以上 (1140以上) |
825以上 (1070以上) |
10以上 (10以上) |
汎用性の高い 代表的品種 |
20 | 320 (375) |
200 (260) |
6Al-4V ELI (JIS60E種) |
焼鈍 | 890以上 | 825以上 | 10以上 | 低温靭性 | 20 | 320 | 200 |
β合金 | ||||||||
15V-3Cr-3Sn-3Al | ST (STA) |
705~945 (1000以上) |
690~835 (965-1170) |
12以上 (7以上) |
冷間加工性 時効硬化性大 |
- | 270 (390) |
160 (220) |
22V-4Al | ST (STA) |
640以上 (980以上) |
540以上 (885以上) |
10以上 (7以上) |
冷間加工性 時効硬化性大 |
- | - | - |
物理的性質
- 溶融点は1,668℃で高い(鉄よりやや上)。
- 比重は4.51で軽い(鉄の約60%、アルミニウムの約1.7倍)。
- 熱誇張係数は8.4×10-6/℃で小さい (18-8ステンレス鋼の約半分、アルミニウムの1/3)。
- 熱伝導率は0.041cal/㎝2/sec/℃/㎝で小さい (18-8ステンレス鋼とほぼ同じ)。
- 電気抵抗は55μΩ-㎝で大きい (18-8ステンレス鋼以外の純金属に比べて大きい)。
- 透磁率は1.0001で非磁性体である。
- 結晶構造は変態点(885℃)以下では稠密六方格子で、変態点以上では体心立方格子である。
- 縦弾性係数は10,850kgf/m㎡で小さい。(鉄の約半分、アルミニウムの約1.5倍)。
項目 | 原子番号 | 原子量 | 比重 | 溶解点(℃) | 熱膨張係数 ( /℃) |
比熱 (cal/gr/℃) |
---|---|---|---|---|---|---|
チタン | 22 | 47.90 | 4.51 | 1,668 | 8.4×10-6 | 0.124 |
鉄 | 26 | 55.85 | 7.9 | 1,530 | 12×10-6 | 0.11 |
18-8ステンレス鋼 (SUS304) |
- | - | 7.9 | 1,400~ 1,420 |
17×10-6 | 0.12 |
アルミニウム | 13 | 26.97 | 2.7 | 660 | 23×10-6 | 0.21 |
アルミニウム合金 | - | - | 2.8 | 476~ 638 |
23×10-6 | 0.23 |
マグネシウム | 12 | 24.32 | 1.7 | 650 | 25×10-6 | 0.24 |
ニッケル | 28 | 58.96 | 8.9 | 1,453 | 15×10-6 | 0.11 |
ハステロイ C | - | - | 8.9 | 1,305 | 11.3×10-6 | 0.092 |
銅 | 29 | 63.57 | 8.9 | 1,083 | 17×10-6 | 0.092 |
チタンの耐食性
- チタンは、表面の安定な酸化皮膜(不動態被膜0)の存在によって、優れた耐食性を発揮します。
- チタンの耐食性は、溶接、加工、熱処理などの材料履歴により劣化しません。
- 塩酸や硫酸などの非酸化性酸に対しては、濃度・温度条件によっては腐食されますので注意が必要です。
- 苛性ソーダなどのアルカリに対しては、極端な高温・高濃度条件を除いて、十分な耐食性を示します。
- 海水に対する耐食性は、白金に匹敵します。
- 酸素、水素、窒素ガスとの親和力が比較的大きいため、条件(温度や圧力など)によっては使用上注意を要します。
他金属材料との耐食性比較
腐食媒 | 組成(%) | 温度(℃) | 耐食性 | ||
---|---|---|---|---|---|
チタン | 18-8 ステンレス |
ハステロイ C | |||
塩酸 | 10 30 10 30 |
24 24 80 80 |
〇 × × × |
× × ― ― |
◎ ◎ 〇 △ |
硫酸 | 10 50 10 50 |
24 24 100 100 |
△ × × × |
― × ― ― |
◎ ◎ ◎ ◎ |
硝酸 | 10 50 10 50 |
24 24 100 100 |
◎ ◎ ◎ ◎ |
◎ ◎ ◎ 〇 |
◎ ― △ ― |
王水 | HCI・HNO 3:1 |
24 100 |
◎ 〇 |
× ― |
△ ― |
クロム酸 | 5 | 24 | ◎ | ― | ◎ |
弗化水素 | 5 | 30 | × | × | △ |
燐酸 | 10(通気) 50(通気) 10(通気) 50(通気) |
24 24 100 100 |
〇 △ × × |
◎ ◎ ◎ 〇 |
◎ ◎ ◎ ◎ |
塩化第二鉄 | 10 30 10 30 |
24 24 100 100 |
◎ ◎ ◎ ◎ |
× × ― ― |
◎ ◎ × × |
塩化第二銅 | 10 30 10 30 |
24 24 100 100 |
〇 〇 〇 〇 |
× × ― ― |
〇 〇 ― ― |
塩化ナトリウム | 10 40 10 40 |
24 24 100 100 |
◎ ◎ ◎* ◎* |
〇 〇 〇* 〇* |
〇 〇 〇 〇 |
塩化カルシウム | 10 50 10 50 |
24 24 100 100 |
◎ ◎ ◎* ◎* |
◎ 〇 ― × |
◎ ◎ ◎ ◎ |
塩化アンモニウム | 10 40 10 40 |
24 24 100 100 |
◎ ◎ ◎* ◎* |
△ ― ― ― |
◎ ◎ ◎ ◎ |
塩化マグネシウム | 10 40 10 40 |
24 24 100 100 |
◎ ◎ ◎* ◎* |
△ 〇 △* ― |
◎ ◎ ◎ ◎ |
硫酸第一鉄 | 10 50 10 50 |
24 24 100 100 |
◎ ◎ ◎ ◎ |
〇 〇 〇 ― |
〇 〇 〇 〇 |
アンモニア | 10 30 10 30 |
24 24 80 80 |
◎ ◎ ◎ ◎ |
◎ ◎ 〇 〇 |
◎ ◎ 〇 〇 |
苛性ソーダ | 10 50 10 50 |
24 24 100 100 |
◎ ◎ ◎ 〇 |
◎ ◎ ◎ 〇 |
◎ ― ◎ ◎ |
炭酸ソーダ | 10 30 10 30 |
24 24 100 100 |
◎ ― ◎ ◎ |
◎ ― ◎ ◎ |
◎ ― ◎ ◎ |
硫化水素 | 乾燥ガス 湿潤ガス |
24 24 |
◎ ◎ |
△ 〇 |
◎ 〇 |
塩素 | 乾燥ガス 湿潤ガス 乾燥ガス 湿潤ガス |
24 24 100 90 |
× ◎ ― ◎ |
― ― ◎ ― |
◎ △ 〇 △ |
亜硫酸ガス | 乾燥ガス 湿潤ガス |
30~60 30~90 |
◎ ◎ |
― ― |
― ― |
海水 | 高速流 静止水 |
24 100 |
◎ ◎* |
― ― |
― ◎ |
酢酸 | 10 60 10 60 |
24 24 100 100 |
◎ ◎ ◎ ◎ |
◎ ◎ ◎ 〇 |
◎ ◎ ◎ ◎ |
蟻酸 | 10 50 10 50 |
24 24 100 100 |
〇 〇 〇 × |
〇 〇 × × |
◎ ◎ ◎ ◎ |
乳酸 | 10 50 10 50 |
24 24 100 100 |
◎ ◎ ◎ ◎ |
〇 〇 〇 × |
〇 ◎ 〇 〇 |
蓚酸 | 10 20 50 10 50 |
24 52 24 100 100 |
〇 × ― ― ― |
〇 ― 〇 ― × |
〇 〇 〇 〇 〇 |
クエン酸 | 10 50 10 50 |
24 24 100 100 |
◎ ◎ ◎ × |
〇 〇 〇 × |
◎ ◎ ◎ ◎ |
注)*は孔食その他の局部腐食を起す場合があります。
記号の説明
◎:<0.127mm/year
〇:0.127~0.508mm/year
△:0.508~1.27mm/year
×:>1.27mm/year